池井戸潤 『民王』

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ある日突然、首相・武藤泰山と、武藤の大学生のドラ息子・翔の中身が入れ替わってしまう。
原因もわからないまま、やむなく泰山の変わり身となって国会に出ることになった翔。
遊んでばかりの日常を送ってきた翔には、国会でおこなわれる討論や質疑応答など、到底理解できない。
幼稚な発言を繰り返す上、首相だというのに文書に書かれた漢字すら読めず誤読を繰り返すという状況に……。
首相と息子の入れ替わりなど夢にも思わない世間では、一国の代表とは言いがたい言動に対する厳しい批判が渦巻く。
またそれと時を同じくして、泰山のまわりでは、閣僚の酔っ払い発言やスキャンダル、献金問題などが相次ぐ。
国を背負うはずの大人たちに、一体何が起こったのか―。

本物の大人とは、国を動かす政治とは何か。

胸がスカッとする、痛快エンタメ政治小説! 

↑アラスジ通り、読後スカッと爽やか・・・・なのですが、やはり現実を見ると「実際はこんなもんじゃないさ」と白けてしまう。

もちろんエンタメ本としては、楽しく読めて、皮肉も効いていて、思わず声をあげて笑ってしまったのですが。
出てくる人たちが皆とってもピュア。総理も官房長官も幹事長も秘書も。
だから理想を語ったり、若いころの信念を思い出したりして共感できる展開になっていきます。

小説としてまとめるためには、シンプルに描くほうが分かりやすいのでしょうが・・・。
う~ん、菅総理だって鳩山さんだって、その前の麻生さんやらなにやらも、みんな若いころや、総理になる前は理想に燃えていたと思うのですよ。
でも、政権交代までしても、なかなか思い切った政策は実現しないし、時間がかかるのが民主主義って言うくらいですから。こんな風に人格が入れ替わったくらいで(いや、すごい大事件ですがね^^;)すらすらと日本がよくなるとは思えない。
なにかここ数年の動きですっかり醒めた目で観てるなあと我ながら思います。


で、そんな現実はオイトイテ・・・。

麻生さんが漢字を読み間違えたり、外務大臣が酔っぱらって会見を開いたり。
ここにヒントを得た作者がノリノリで書いているのがわかって、その辺もまた可笑しいです。
一国の大臣や総理がこんなアホなことするわけない・・・・ならば何故こんなことに・・・・そうか、人格が入れ替わったのだ・・・・たとえば馬鹿息子とか馬鹿娘なんかどうだろう。

もうこのアイデアで半分は成功したようなものですよね(笑)

しかも馬鹿息子と思っていたら、実は・・・とか。息子の就職試験に代わりに行って(中身は総理)思わず面接官を叱りつけたり、高説を熱く語ったりとか。
入れ替わりもののお約束ですが、このへんはさすが池井戸さん。筆が走る走る(笑)


軽いタッチで風刺も効いて、読後感すっきり。
私みたいにひねくれてない方に是非読んでいただきたい、傑作コメディです。