オースン・スコット・カード 『エンダーのゲーム』

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カードという作家は以前から話題になっていて、気になっていた一人でした。
本楽大学SF学部でも、初心者にすすめるSFや、マイ・ベスト・SFにも多く取り上げられていて、今回やっと読む機会を持てました。

はるかな未来、人類はバガーという昆虫型宇宙生物の侵略を受けていた。
バガーに対して人類の兵力は圧倒的に劣っていた。
なすすべもなく敗れ去っていく人類の軍隊。しかし、ある男の部隊が、一瞬にしてバガーを打ち負かし、それいらい何十年の間、バガーは姿を現していない。
しかし、危機は依然として続いていた。第二次バガー戦役にそなえて、宇宙軍は戦闘の才能にたけた子供を選別して軍事的英才教育を施すこととなった。

エンダーは、その時6歳。兄や姉も天才的な子供であったが、選ばれたのはエンダーだった。

養成所に送られたエンダーは選ばれたほかの子供たちとともに、過酷な訓練を受ける事となる。
エンダーという名前(終わらせる者)の通り、戦争に勝ち、侵略を終わらせることができるのか。
救世主はエンダーなのか。

SFという世界の広さを思うと、この作品もまた、一つのジャンルにおける輝ける金字塔であるといえましょう。
子供たちが受ける訓練、戦闘、そして、絶え間なく課せられるゲーム。
年少のエンダーがめきめきと頭角をあらわして、上級生を排除していく過程は面白くもあり、ストレスのたまるシーンもあり、カードの乾いた文体が神経にこたえるシーンを克明に描いていきます。


今のゲームでいうと、この小説の中で行われている戦闘ゲームは「シミュレーション・ゲーム」ですね。
最初のころは、戦友たちとチームを組んで、戦闘訓練や身体を使った模擬戦をしていたエンダーたちですが、訓練も終盤になるとマシンを通して、それぞれが離れた地域から参加するコンピューター・ウォーになっていきます。
オンライン・ゲームそのものではないでしょうか?

そして、エンダーの兄、姉が、ハンドル・ネームを使って(子供の身分を隠し)即時通信システムに「アンシブル」を通して論文やアジテーションを発表し、次第に時代の寵児にのし上がっていくところなど、これからのインターネット社会の行く末を暗示しているようでした。

大人たちの思惑や、エンダーの兄、姉の暗躍など、物語は複雑に絡み合いながら最終戦争にむけて走っていきます。
最後に真実が姿を現します。
エンダー少年の子供時代の数年を犠牲にして、人類が得たものは・・・。


この小説は、続編もあるようですので、そちらを読むのも楽しみになってきました。