12歳の誕生日までに読んでおきたい名作ファンタジー『トムは真夜中の庭で』

出版社/著者からの内容紹介
知り合いの家にあずけられて,友だちもなく退屈しきっていたトムは,真夜中に古時計が13も時を打つのをきき,昼間はなかったはずの庭園に誘い出されて,ヴィクトリア時代のふしぎな少女ハティと友だちになります.「時間」という抽象的な問題と取り組みながら,理屈っぽさを全く感じさせない,カーネギー賞受賞の傑作です.

ファンタジーの名作として不動の地位を築いた作品です。
日本では1975年に発行された本書、実は1957年にカーネギー賞を受賞しています。
なんと半世紀近くも前の児童文学だったのですね。
ナルニアシリーズも1950年から始まったことを考えると、ファンタジーの息の長さが改めて分かります。


この作品は非常に構成が巧みです。時間をテーマにしたタイムスリップものなのですが、トムの体験を通して時間の中を行き来するので、わかりやすく、子供でも容易にストーリーに入り込めます。
しかし、その体験の不思議さ、時間の流れの不可解さ、そのへんがきちんと押さえられていて、優れたSF作品を読んでいるようなワクワク感も味わえるのです。


トムは毎晩 大時計が13を打つと、ベッドを抜け出してロビーから、美しい庭園へと入っていきます。
するとそこは、トムが住んでいるお屋敷の昔の時代らしいのです。
住んでいるのは、意地の悪い夫人と三人の男の子。それに引き取られた姪のハティ。
ヴィクトリア時代の少女ハティと仲良くなったトム。

何故かトムの姿は人には見えません。物をつかんだり、動かすこともできないのです。
でも、小鳥や犬や、ハティは違いました。
トムの姿が見えるのです。
二人は、まもなく親友になっていきます。

でも、トムは毎晩庭園に遊びにきてるつもりなのに、庭園は毎回違った季節、時間のように思えます。
ハティもトムに向かって
「あなたは、また明日ね、っていつも言うけれど、来るのは何ヶ月も後だったりする。」
と言うのです。
トムの一日はハティの時間の何ヶ月にも相当するのでしょうか?
時間、この不思議なもの。眼にもみえず、触る事もできませんが、いつも私達はその中に生きています。
そして、確実に時間は流れています。
庭園にいる女の子は、少しづつ成長して、少女から大人の女性に変わろうとしています。


時間を超えてめぐり合ったふたりの子供たち。


ラストの感動をどうぞ、心ゆくまで味わってください。
トムとハティの強い絆にきっと胸が熱くなるはずです。