法月綸太郎 『法月綸太郎の冒険』

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内容(「BOOK」データベースより)
名探偵・法月綸太郎に挑戦するかのように起こる数々の難事件。なぜ死刑執行当日に死刑囚は殺されたのか、図書館の蔵書の冒頭を切り裂く犯人、男が恋人の肉を食べた理由など異様な謎に立ち向かい綸太郎の推理が冴えわたる。「ルーツ・オブ・法月綸太郎」ともいえるミステリの醍醐味あふれる第一短編集。 

法月綸太郎の第一短編集である。

「死刑囚パズル」
推理小説としては、この作品が一番読み応えがあった。
死刑制度の中で、刑務官の果たす役割。国家に代わって殺人をしなければならない。という非常に重い務めに対する作者の真摯な姿勢が見受けられた。
解決も胸を打たれるものだった。

「黒衣の家」
親戚の葬儀に出席した法月父子。そこで気が強く冷たい老母と息子の諍いが起きる。
ほどなくしてその家のオウム(ジャッキー)が毒殺され、続いて老母も毒殺されてしまう。

作者の解説にこの作品はある著名な作品のプロットをそっくり踏襲している、とある。
ヒントはオウムの名前だそうだ。
クイズです^^;お分かりになった方、(もちろん既読の方)答えを内緒でコメントしてください。(ってか簡単すぎ!)

カニバリズム小論」
食事中は読まないほうが良いと言った感じの「カニバリズム論」がいろいろ出てくるが、結末はありがち。

「切り裂き魔」
図書館シリーズ。図書館司書の穂波に惚れてしまった綸太郎が、エラリーと重なって楽しい短編です。
さくさく読めてとても印象に残る謎でした。
この穂波の出てくるシリーズは、本が主人公となってくる作品が多く、いわゆる日常の謎系です。
本好き、ミステリ好きにはたまらないかも。

「緑の扉は危険」
図書館に蔵書を寄贈する、という遺言を残してディレッタントの愛書家が自殺した。しかし、未亡人はなかなか引き渡しに応じようとしないのは何故か?
綸太郎がデートと思っていそいそと出かけると、図書館のお仕事絡みで穂波にいいように引き回されているのがニッキー・ポーターとエラリーのようですね。
トリックはありがちかも。

「土曜日の本」
50円玉20枚の謎を、13人の作家と競作するはめになった綸太郎。
今回もなにかいいネタはないかと穂波の勤める図書館に足を運ぶ。

これは、内輪ネタ満載でした。謎って・・・解決してないだろう!(思わずツッコミ!)

「過ぎにし薔薇は」
穂波の勤める図書館に装丁家の本間志織が現れるようになった。ジャンルのバラバラな本を三冊づつ毎日のように借りていく。
綸太郎の尾行で、同じように他に数館の図書館でも三冊づつ借りていることが分かった。
謎ともいえないようなこんな装丁家の行動の影に隠されていた悲しみは何だったのか?
日常の謎系の短編。
ミステリとしては何だったけど、お話はよかった。

私はこの図書館シリーズが気に入っている。
法月さんの暗くて重いミステリもいいけど、穂波の回りに不思議と集まる不思議な事件。
本にまつわる話しが多く、図書館という場所に集まる不特定多数の人たちを見ていると、いかにもありそうな謎が提示されていて楽しく読める。