ルイ=トマ・ペルティエ 『お人形と結婚した男』

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内容(「BOOK」データベースより)
大手保険会社に勤める26歳のフランシス。消費者からのクレーム処理の一環でポルノショップを訪れた彼は、“ペニス引き伸ばし器”なるものを購入するはめに。ほうほうの体で店を去りかけたフランシスだが、プラスティックのお人形に目を奪われる―それは、彼を捨てた最愛の女性ジュヌヴィエーヴに瓜ふたつだった!まもなく彼は、酒に酔った勢いで“彼女”を購入し、お人形と暮らしはじめるのだが…。最愛の恋人を失った男の奇妙な同棲生活を描く、ファンタスティックで心温まる物語。 

ゆきあやさんのブログで知ったこの本
詳しいいきさつはこちらでお読みください。

まあ、表紙をご覧になってドン引きされる方も多いかと思いますが、なんととても面白くハートフルな一品でした。知的な作品といってもいいでしょう。

「あなたのことは、とても好きなのよ。フランシス。」
そう彼女に切り出された本書の主人公フランシス。
でも・・・それは別れ話の始まりだった。
「あなたって、とても良い人だと思うの。」
これなんかと同じ構文ですね^^。
「でも」と続く次の展開がこうなるっていうのは。

しかし、このフランシス、あきらめないあきらめない。
彼女が去年よこしたラブレターの詩なんかを持ち出して、朗読なんか始めてしまうのだ。
しかし(あたりまえだが)彼女の心が戻るわけもない。そして、彼女はテニスのコーチと恋に落ちたと告白するのだ。

「ガァーン!なんてこった!」

ホントにガァーン!って書いてあるんですよ(笑)
なぜかフランシス、テニスのコーチと聞いた瞬間にあきらめてしまう。(なんなんだ?この男!)
「テニスのコーチとは勝負できない。信用金庫の支店長や靴屋の店長や鉄鋼材のセールスマンならどうってことない。ぎりぎりがんばって、前立腺の専門家とか養蜂家とかでも相手になるだろう。」
どういう基準なのだろう?!
「こうしたやつらの一人と自分の彼女が恋に落ちてしまったら、善良な市民にはもはやなす術はない。」

よく分からない価値観を持つフランシスに呆れながら読み進む。
するとジャンなる親友の登場。
この二人の会話がまた可笑しいのだ。「ヘラジカ」から「ホモ」に至る会話など絶妙!
このジャンが、傷心のフランシスを心配していろいろおせっかいを焼いてくる。
色々な女性を紹介されるが、その全てが裏目にでてしまうフランシス。
そこからダッチワイフとの不可解な同居が始まるのだが、なかなか微笑ましい展開になっていく。

皮肉がちょっとしたスパイスになり、章ごとに挟まれる銘句も楽しさを盛り上げてくれる。
サン・ジュスト、バートランドラッセルからシャルル・アズナブールに至るまで、クスッと笑ってしまうようなお言葉がなかなか的を得ているのだ。

これは、当たりでしたね。ゆきあやさん^^;
最後にお言葉の一つを挙げてみよう。
「みんなが同じことを考えているというのは、誰も考えていないということだ。」
真理です^^。