伊坂幸太郎 『陽気なギャングの日常と襲撃』

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内容(「BOOK」データベースより)
人間嘘発見器成瀬が遭遇した刃物男騒動、演説の達人響野は「幻の女」を探し、正確無比な“体内時計”の持ち主雪子は謎の招待券の真意を追う。そして天才スリの久遠は殴打される中年男に―史上最強の天才強盗4人組が巻き込まれたバラバラな事件。だが、華麗なる銀行襲撃の裏に突如浮上した「社長令嬢誘拐事件」と奇妙な連鎖を始め…。絶品のプロット、会話、伏線が織りなす軽快サスペンス!伊坂ブームの起爆剤にして、映画化で話題の「陽気なギャング」ここに待望の復活。
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陽気なギャングが地球を回す」の続編にあたります。

前作同様、テンポよく洒落た会話をちりばめながら話しが進行していきます。
一見ばらばらだった小さな事件が、だんだん一つの誘拐事件に収束していく手腕は、相変わらずお見事です。

四人組強盗団のスラプスティック・コメディだが、伊坂幸太郎氏の作品はドタバタでもどこか品がよい。
特に前半は作者自身とても楽しんで書いていることが伝わってくる。

今回は久遠青年が大活躍です。
悪者と戦う正義のWWF(World Wild Fund自然保護団体)のようで、毛を刈られた羊や絶滅しそうなホッキョクグマのような人たちを救うべく、掏りの腕を使います。
成瀬、響野、雪子、久遠。この4人の関係も好きですが、今回は響野の妻、祥子と雪子の関係もよかったなあ。二人とも好きなタイプの強い女性たちです。

ただ欲を言えば、ストーリーがやや散漫になってしまったような、惜しいところもありました。
前作より、緊張感は薄れているようです。
響野ファンとしても、もっと演説(無駄話し)が聴きたかったし・・・。

喜劇役者の舞台、幻の女、殴打される中年男の謎。
伊坂氏の豊かな想像力が、軽やかにエンターテイメントとして発揮された良作でした。