しろがねの猫こがねの蝶~蕪村~

久しぶりに「詩」の書庫の更新です。

江戸時代の俳人、与謝野蕪村。
松尾芭蕉小林一茶と並ぶ江戸俳諧中興の祖、俳画創始者でもあります。

蕪村の句は、空間が大きく色合いが豊かです。

画家でもあった蕪村は、世界の様相を瞬間にとらえ、印画紙に焼き付けるような俳句を作りました。

私の今一番気になる俳人です。

寂として客の絶間のぼたん哉

春雨やものがたりゆく簑と傘

春の海終日(ひねもす)のたりのたり哉

しのゝめに小雨降出す焼野かな


自然のなかの蕪村。静かに物言わぬ自然と、そこに佇む蕪村の眼差しが交差するようです。

ゆく春や逡巡として遅ざくら

さみだれや大河を前に家二軒

石工(いしきり)の鑿(のみ)冷したる清水かな

ところてん逆(さか)しまに銀河三千尺

なんとスケールの大きな作品でしょう。かと思うと鑿の刃先にしたたる水滴に目をむける。
この大から小に移る視点もまた、蕪村らしい特徴です。

をちこちに滝の音聞く若ばかな

ぼうたんやしろがねの猫こがねの蝶

牡丹と猫と蝶ははそれぞれ付き物で、画題にも取合わされるそうです。

静さに湛えて水澄たにしかな

春雨の中を流るゝ大河かな

秋来ぬと合点させたる嚔(くさめ)かな

小狐の何にむせけむ小萩はら

朝がほや一輪深き淵のいろ

秋雨や水底の草を蹈わたる

蕪村の世界は、湿度が高く、雨が多く風が強く吹いています。

河もゆったり流れ、時には飛沫をあげて滔々と流れていきます。

しかし、手元をみるとかわいい子狐や小さな朝顔が顔を覗かせているのです。

鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分哉

広々とした枯れ野の風景にどことなくユーモラスな感じのする早馬が駆け抜けて、ある種、爽快な一句です。

欠々て月もなくなる夜寒哉

盗人の首領歌よむけふの月

名月やけさ見た人に行きちがひ

きのふ花翌(あす)をもみじやけふの月

満ち欠けする月、東から西へと移り行く月。
そんな動きを詠むことで、流れる時間が表現されています。


どうも川柳大賞の企画が頭についているようで、五七五のリズムの参考にしようと探してきました^^;
しかし、250年も前の俳句。
現代の人達をハッとさせる新鮮さに満ちているのが不思議です。