有川浩『塩の街』 『空の中』

イメージ 1イメージ 2

有川浩のデビュー作「塩の街」と「空の中」を読んでみました。

「海の底」があまりに衝撃的に面白かったので、期待をしすぎたところもありましたが「空の中」はなかなか、「塩の街」はちょっと、期待はずれかなといった感想でした。

塩の街」

塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。
その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。
静かに暮らす二人の前を、さまざまな人々が行き過ぎる。あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。
それを見送りながら、二人の仲で何かが変り始めていた。

そして、「世界とか、救ってみたいと思わない?」そそのかすように囁く男が、二人に運命をつれてくる。
(文庫あらすじより)


電撃ゲーム小説大賞受賞作です。これで、デビューした作者ですが、「塩害」の原因がまたもトンデモ物であります。空から降ってきた「塩のかたまり(結晶)」が人類を、塩に変化させ社会を崩壊させてしまうのです。
凄い設定ですが、あとがきで作者が「初めて上手に書こう、ではなく書きたいように書こうと思って書いた作品」とあるように、のちの有川節の片鱗が見えて面白く読みました。

この人は、どうしても自衛官と戦闘機がでてくる作品を書いてしまうんだなと思いました^^;


「空の中」

高度2万メートルの空に、レーダーにも写らない謎の巨大物体(生命体)が存在した!

生命体は太古からその空域に存在していた。知性があり、ヒトとコミュニケーションできる空の怪物。

2機の航空機がその物体に激突して二つの家庭が壊れていった。

その謎の生命体の一部は激突のショックで小さく切り離され地上へ落下してしまう。

偶然落下した一部は、激突死した機長の遺児、瞬に拾われ飼われることとなった。

 作者の怪獣趣味が発揮された快作でした。高校生、瞬と佳江、そして宮じいという魅力的なキャラクターが活躍する高知の様子は作者の出身地に馳せる思いが覗いていますね。高知弁もリアルで暖かく瞬たちの生活が生き生きと描かれています。

 自衛官光稀(みき)と事故調査員高巳(たかみ)が活躍する生命体との交渉の場面や、人間界の足並みの乱れなどは、いかにもありそうな感じの展開で読ませます。人類と知的生命体とのファーストコンタクトの結末は?

宮じいの素敵なせりふは、高知弁ならではのゆったりした暖かさがいっぱいで、大好きな登場人物になりました。

 しかし、なんといっても作者の奔放な想像力を楽しんでもらいたい作品ですね。