フリア・ナバロ 『聖骸布血盟』

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今の日本でトリノと言えば冬季オリンピックの話題だと思いますが、今日のご紹介本は「トリノの聖骸布」の歴史とそれにまつわる伝説、陰謀を描いた小説です。

ダン・ブラウンの歴史ミステリーが好きな方なら、けっこう楽しめる仕上がりですが、本家にはかなわないかなあ、というのが正直な感想です。

キリストの聖骸布が保管される、トリノ大聖堂で火災が発生。焼跡から発見されたのは、“舌のない男”の焼死体だった。その2年前同じ聖堂で逮捕された窃盗犯にもやはり舌がなく、指紋もすべて焼かれていた。美術品特捜部部長マルコは、二つの事件の関連を疑い捜査に乗りだす。だがこれは、やがて世界を震撼させる恐ろしい陰謀劇の序章にすぎなかった……。聖骸布をめぐる謎と歴史のうねりが織りなす、歴史ミステリ巨篇。 (文庫版より)

現代のトリノで起きた事件を解決に導こうとする、美術品特捜部と謎の集団の攻防と、古代のキリスト受難から綿々と伝えられた聖骸布をめぐる歴史が交互に語られていきます。

部長のマルコ、学者のソフィア、ジャーナリストのアナなどが、それぞれ、情報を得るために様々な人たちとかかわります。その中で、2000年もの間聖骸布を守り続けてきた組織やテンプル騎士団など、歴史の闇から甦りさらに謎は深まっていきます。
途中、冗長になった部分もありましたが、なかなか面白い歴史ミステリといえるでしょう。

ただ、部長のマルコなどもう少しなんとかしたら魅力的な登場人物になりそうなのですが、人物が未消化な感じがして残念でしたね。
これは他の登場人物についても、言えることだと思います。

ここで、聖骸布という物についてですが、キリストが十字架に架けられて死んだ身体を埋葬するときに包んだ亜麻布のことです。

そこにはまるで写真のネガフィルムのように一人の男性の姿が写し取られていたのです。

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茨の冠をかぶり目を閉じた男性の姿は、手、足に釘を打たれた跡があり、わき腹にも刺し傷、体中に鞭でうたれた傷跡がありました。
聖書にあるキリストの姿そのものです。バクテリアの働きでこんな像が写ったのだという説、奇跡という説、諸説がありますが、未だに布の存在は最大の謎として残っています。

本書にもあるように、この聖骸布の真贋についてですが、1988年、放射性炭素年代測定の結果、この聖骸布は1260年から1390年の物であることが判りました。聖骸布は贋物と判断されたのです。しかし、それでは説明の突かない事実。何故あのような像が写しとられたのか、布についた血液は誰のものか、2000年前の花粉が付着していた理由は、などまだまだ贋物と切って捨てるわけには行かない奇跡が残っているのです。

そして最近になって、又、ショッキングな情報がはいってきました。微量分析という手法で布を検査したところ、今度は1300年から3000年前の物であるとの結果が出ました。
かなり幅広い年代にまたがっておりますが、聖骸布が贋作ではない、真実の物である可能性が出てきたのです。

キリスト教2000年の歴史のなかでもとりわけ不思議な経緯で現代に伝わっている聖骸布、これをめぐるミステリはまだまだ、続きそうです。