若竹七海 『スクランブル』

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女子高校で起きた殺人事件を、15年後結婚式で久し振りに再会した友人たちが回想しながら解き明かしていくミステリーである。

 1980年、17歳の少女が私立女子高のシャワールームで殺害された。
彼女はこの学校の生徒ではなく身元は不明。
警察も入って学内は騒然とする。

夏見、マナミ、洋子、宇佐、沢渡、飛鳥の6人も事件に興味をひかれた。彼女たちは高校からこの私立校に入学した「アウター」だった。中学部から持ち上がりで進学した内部者と、あからさまに差別されながらも気が強く成績も優秀な彼女達は目立った存在だった。
そんな彼女達の前に振って湧いた殺人事件。探偵もどきの推理をしてはみるものの事件は結局迷宮入りとなってしまった。

そして、15年が過ぎかつての過激だった文学少女たちも平凡な生活に慣れ、友人の結婚式に普通の顔をして出席するほどには丸くなっていた。

金屏風の前には6人のうちの一人が照れくさそうに微笑んでいた。

 夏見はそれを見ながら、眩暈とともに記憶の断片が甦り繋ぎ合わされていくのを感じていた。そして彼女はある結論に達した。

 「わかったのだ。わかった、わかった、わかった。あの未解決の事件の真相とその犯人とが。いまになって、急にわかったのだ。
  犯人は金屏風の前に座っていた。」 

かつて17歳だったすべての人に送る青春ミステリーという紹介文の通り、ノスタルジックでほろ苦い、優れた作品である。

読書好きだった6人の交友や高校生活の描写は、思春期の少女たちが直面する悩みやくだらないおしゃべり、将来の不安など丁寧に描かれていて好感がもてた。

私立の女子高という特異な環境で起きる様々なエピソードやなども、読んでいて大変面白く、自身の女子高時代と重なる部分も多くあった。

あの頃の自分を見せられているような、懐かしいより恥ずかしい記憶が呼び起こされれてしまった。自分が分からないまま、自意識過剰になり有頂天になったり落ち込んだり、手探りの状態はなんとももどかしいものだった。
平凡を忌み嫌い、結婚なんかするもんかと思っていた。30まで生きることが信じられなかった17歳。

夏見や他のメンバーほど潔く生きていたわけではないけれど、遥か昔の自分に出会ったようなちょっと苦いミステリーだった。