川田弥一郎 『白く長い廊下』

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あまりすさんお薦めの医療ミステリーです。

第38回江戸川乱歩賞を受賞しています。ちなみにこの賞は乱歩が還暦の記念に1954年日本探偵作家

クラブに100万円を寄付して設けられたものだそうです。乱歩先生太っ腹ですね。

十二指腸潰瘍の手術を受けた患者が、病室に運ばれる途中急変した。

意識不明の重体となった患者はその夜死亡してしまう。麻酔担当医だった窪島は医療ミスの責任を問われ

る。だが、納得いかない窪島は、協力をもうしでてくれた薬剤師の山岸ちづるとともに独自の調査をはじ

める。

病院上層部の事なかれ主義や、同僚医師の冷ややかな態度に苦しみながら窪島はちづるの助けもあって

徐々に事件の真相にせまっていく。しかし、関係者の真の姿を暴き出した彼らの行動は思わぬ事態を招い

てしまった。 


現役の医師が書いたミステリーだけあって、麻酔の効能や手術の様子、また医局間の生々しい駆け引きな

どリアルに描かれていました。医療ミスなのか、他の病気が原因なのか、もしくは犯罪者がいたのか?

患者の死をつきつめて考えながら、窪島は慣れない聞き込みや証拠の捜索に走り回ります。素人が刑事の

真似事をしても、うまくいかず読者は歯がゆい思いをしながら読み進みますが、ちづるがなかなか鋭い捜

査の方針を打ち出したりして真相が少しずつ明らかになるところは、大変おもしろかったです。


この作者、第二作目は「白い狂気の島」というタイトルで、窪島医師の後日談らしいです。
医療パニックものとありますから、新境地を開いているのでしょうね。この作品も読んでみたいと思って
います。