変なおじさん

 志村けんのことではありません。


親戚の叔父に(70代半ば)すっごい変人がおります。

東洋哲学を専攻して、中国の古代、夏王朝という時代などを研究している人でして、当時中国は殷という

王朝(?)があったことは認められていたのですが、その前の夏王朝は遺跡、遺物などがあまりなくて

幻の王朝と言われてました。現在は(多分)認められていると思います。(あやふや・・・)

 その叔父は、ただでさえ幻の存在である夏王朝の哲学、神学、神話、そういったものを研究しておりま

した。どうやって存在すら定かではない夏の精神世界にたどりついたものやら、素人の姪としては、さっ

ぱりわけが解からなかったのですが、とにかく自費出版をして早稲田の図書館にも入れてもらったらしい

のです。(出身校です)

 研究だけで食べていくほど裕福ではないので、臨時の教員などもしておりましたが、あまりに変わり者

なのでかえって生徒の受けもよく(こびない、へつらわない、歯に衣着せない教師として)けっこう

卒業しても連絡してくる生徒が絶えなかったとか・・。

 私の連れ合いもかなりの変人なのですが、この叔父を見ていたので結婚するときはあまり気にならなか

ったというオマケまでついていますw

 変な人というのは、けっこう感性が鋭い人が多いのか彼も中学の頃から「日本は戦争にまけるよ」とか

非国民な発言をしていたらしく弟のほうの叔父は「おかげでいじめられた」と後々までこぼしておりまし

た。バブルの前から、銀行は潰れるから預金するのは危ないとか、はたで聞いてると妄想か妄言かと

思うような事ばかり言ってた記憶もあります。株が暴落して潰れるとか(誰も聞いてなかったような)

よく騒いでおりました。

 人柄は、お世辞にも社交的とはいえないけれど冷たい人ではないと思います。以前私が遊びにいって

帰るとき「危ないから送ってやる」と言って、駅まで自転車で送ってくれました。が、しかし・・・

その時の格好が、黒いコートにグレーの帽子、黒ぶちの眼鏡にマスク、その怪しい格好で私の周りを自転

車でぐるぐる回りながら付いてくる・・・。ほとんど変質者かストーカーですw

 健康オタで、漢方薬に詳しくて秋葉原紀伊国屋漢方に行って、他店のスパイかと怪しまれたり、いろ

いろエピソードにことかかない人であります。

 そんな叔父も大学在学中に当時人気作家だった江戸川乱歩にめちゃくちゃハマッタそうです。乱歩の作

品を読みまくり、ついに自分も探偵小説を書き始めました。400枚位の長編推理を書き上げた叔父は

それを乱歩先生の元に送りつけました。祖父母や叔父の兄弟たちは、なしのつぶてだろうと思っていたそ

うです。ところが、一月ほどして原稿が送り返されてきました。原稿には乱歩の直筆で、びっしりと

朱筆が入れられており、最後に「作品としてはまだまだですが、これからも良く勉強して書き続けると

いい」と言う意味のメッセージがあったそうです。

 現在その原稿がどうなったのかは知りませんが、作品から受けるイメージと真摯な対応をした乱歩の

イメージがあまりに違うので家族は皆驚いたそうです。

 叔父らしいのですが、それきり小説の興味は失せて再び中国古代の哲学研究に戻っていったそうであり

ます。