2007 MY BEST BOOKS

ようやく2007年のベストブックの発表です。

去年はブログ1周年記念として2005年11月から2006年11月までに読んだ本の中から選びました。
ちなみに去年のベスト10はこちら。

日本の作品ベスト10
1位 小川洋子博士の愛した数式
2位 伊坂幸太郎 『終末のフール』
3位 恒川光太郎『夜市』
4位 若竹七海スクランブル』
5位 恩田 陸 『ネクロポリス
6位 小路幸也東京バンドワゴン
7位 三羽省吾 『太陽がイッパイいっぱい』
8位 北村薫 『盤上の敵』
9位 有川 浩 『海の底』
10位 奥田英朗 『サウスバウンド』
番外  北森鴻

海外の作品ベスト10
1位 ヴァレリーラルボー『罰せられざる悪徳・読書』
2位 ラルフ・イーザウファンタージエン秘密の図書館』
3位 ステル・パヴロー『暗号解読』
4位 ゼナ・ヘンダースン 『ページをめくれば』
5位 パトリシア・J・マクドナルド 『十三年目の殺人』
6位 レヴ・グロスマン 『コーデックス』
7位 フリア・ナバロ 『聖骸布血盟』
8位 ヴァレリーラルボー『幼なごころ』
9位 ダン・ブラウン『デセプション・ポイント 上・下』
10位 張 平 『十面埋伏』

圏外:西条八十「蝶」


さて今年はといえば、読んだ冊数が圧倒的に少なかったにもかかわらず、ベストに入れたい本が多くて困ってしまうというありさま^^;

それもこれも、ブログで紹介された本の「当たり」の多さによるものでした。
もちろんイマイチ乗りきれない作品もありましたが、そこは私の感性の低さ、鈍さによるものが多かったような^^;
そこで今回のマイ・ベスト・ブックはジャンルを決めてやってみたいと思います。
時期は2006年12月~2007年12月までとします。

古典とその周辺に位置する作品・ベスト

今年の傾向はやはりミステリやSFの古い作品をよく読んだことでしょうか。
泡坂妻夫仁木悦子小泉喜美子なども、面白かったのですが。
あえてあげるとこの5作品です。
「黒死館」のみ再読ですが、はるか昔に読んでキレイに忘れていたので、ここに入れました^^;;


ヘレン・マクロイ 『暗い鏡の中に』

今年の事件といえばこの本!もねさんの「絶版!幻のミステリ巡回ライブラリ」企画で、長年読みたかったこの名作が読めました。ドッペルゲンガーの物語。古い小説で、ゴシック・スリラーとでも呼べそうな、ある種典雅な味わい。
もねさん、去年に続き(「十三年目の殺人」)ありがとうございました!

中西 智明 『消失!』

古典というには若すぎかも知れません^^;それでも、長年絶版となっていた本書。ミステリ好きの試験紙になりそうなマニアックな面白さでした。
今年、やっと再版されたのは喜ばしいですね。


ドナルド・A・スタンウッド 『エヴァ・ライカーの記憶』

古典ながら、ダークな真相には驚かされます。
それにしても、複雑なストーリーをここまで読ませる作者の力量はすごい。「タイタニック沈没」事件を題材にして、虚実を巧みに組合わせ、ラストの展開はまさに畳みかけるようなカタルシスを味わいます。


和製ゴシック・ミステリー。
神奈川県に建設された洋館。通称「黒死館」。そこには過去3回の陰惨な殺人事件が起こっていた。
そして、また連続殺人事件の幕が開く。名探偵法水麟太郎の推理が・・・・冴ない(笑)
とにかく黒死館やそれにまつわるエピソードを語る法水麟太郎の饒舌が濃ゆいです。
亡き妻を偲んで作らせた自動人形のテレーズ。栄光を放つ死体。
それを長々と解き明かす法水麟太郎ペダンティックなお喋り、畳みかけるように起こる次の惨劇。
あらら、法水の解説、見事にハズレ・・・。大丈夫か?法水麟太郎
突然笑い出すのって怖いんですけど(笑)
ミステリ3大奇書の1冊。


広瀬正 『マイナス・ゼロ』

古典というには新鮮な時間SF。
昭和初期が舞台。SFなのにじんと味わい深い作品でした。これも絶版でしたが、もねさんの企画で読めた1冊でした。感謝!



初めて読んだ作家の本・ベスト


今年は皆様のブログで知った作家の作品を読んでみたら大収穫というのが多かったというのも特徴です。

自分では決して読むことのなかった作家たちだと思います。
ご紹介してくださった皆様に感謝!



芦原すなお  『ミミズクとオリーブ』シリーズ

佐藤多佳子  『一瞬の風になれ』

太田忠司  『黄金蝶ひとり』

乙一 『夏と花火と私の死体』

道尾秀介 『背の眼』

乙一は以前「GOTH」で挫折したのでまったくの初ではないのですが、この処女作は掛け値なしに面白かった。
赤朽葉家の伝説』 『一瞬の風になれ』『背の眼』。どれも勢いのある素晴らしい作品でした。
ここが悪いとかいいようもあるのですが、それを上回る個性が光ってました。
『黄金蝶ひとり』 は子供に戻って読み返したい、そんな作品。
『ミミズクとオリーブ』シリーズは美味しいお料理とご夫婦の癒し系の会話がたまらない。




感動のベスト

心の深い部分に訴えかける、そういう本にはなかなかお目にかかれません。
今年、というか去年の12月に読んで2006年のベストに入れられなかった『東京公園』はそういう作品でした。



小路幸也  『東京公園』

梨木香歩 『家守綺譚』

カルロス・ルイス サフォン 『風の影』



五十嵐貴久  『1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター』

貫井徳郎  『空白の叫び』

とにかく深く感動した『東京公園』 『家守綺譚』。
この2作品にめぐり合えたのは、本当によかったです。作中の中に浸って、風や匂いを感じることができた幸福な読書でした。

『風の影』、この小説はなんと言ったらよいのでしょう。あまりに素晴らしくて記事になりませんでした。
幻想的で、ミステリの要素もあり、美しくはかない恋愛小説でもあります。
スペインの内戦、カタルーニャ地方の独立運動も絡めて、複雑で大河のような物語が展開します。
そしてその中心には「風の影」という謎めいた1冊の本が存在するのです。
私のような者が四の五の言うような作品ではありません。風格が半端ないのです。
お薦めの本です。

チョコレートコスモス』の力強い演劇の描写にはまいりました。恩田さんの才能はどこまで開花するのでしょうね。
空飛ぶタイヤ』『1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター』は、ベタな展開でも感動してしまう面白さがありました。スモーク・オン・ザ・ウォーターはずるいよなあと、涙がでてしまった^^;

『空白の叫び』は後味の悪い作品でしたが、やはり少年犯罪の闇を描いた力作で、心に深く残りました。


驚愕のベスト

西澤保彦 『収穫祭』

これはもう奇書でしょう(爆)
ぐいぐい読ませる面白さと、トンデモな展開。バカミス一歩手前というべきか、突き抜けたと言うべきか?(笑)
とにかく西澤さんの力を甘くみていたと思わせる、すんごいミステリでした。
すみません、ボキャブラリーが貧しくて^^;
とにかく、次の作品が心配になるくらいのはじけっぷりでしたね!


といったところの2007 MY BEST BOOKSでありました。

来年も素晴らしい本や作家に出会えますように(なむなむ)