ミステリー悲話「訴えてやる!」
私がいわゆるミステリーを読んだのは、ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」でした。小学校6年生
の終わりごろです。それ以来、創元本格推理物にすっかりハマってしまった私はヴァン・ダインから読み
始め中学入学を迎えました。
そこでエラリー・クイーンのファンである同級生と出会い、二人で「ヴァンスのが頭いい」とか「エラ
リーのほうが偉い」とかくだらない論争を繰り広げておりました。彼女もクイーンの4部作を「Xの悲
劇」「Yの悲劇」まで読み終え「Zの悲劇」の読みかけといった所でした。
忘れもしないバスの中での出来事でした。すっごく面白かったと言う「Yの悲劇」について友人は力説
していたのですが、こちらの反応はイマイチでした。業を煮やした彼女は「犯人がビックリなんだか
ら!」と言いたそうにしています。まさかミステリー史上不朽の名作とは知らない私は「へえ、誰だった
の?」とあっさり尋ねてしまったのです。
うれしそうに彼女は犯人をばらしてくれましたw
そうです、全部私が悪いんですT_T
後で「Yの悲劇」がクイーンの最高傑作の一つと知って、悔しさに歯軋りしようが、頭を床柱に打ちつ
けようが知ってしまった犯人の記憶はもう消えません。こうして、私のベストミステリーから「Yの悲劇」は消えていったのです。
何年か後、「Yの~」衝撃に立ち直っていた私は、再び100t級の衝撃を受けることになりました。
ミステリーの読み方が偏っていた私は、最初のうちクリスティー物をほとんど読んでませんでした。
ある日「世界のミステリー紹介」みたいな名前の書評を読んでいました。ニャるほど、クロフツか
あ・・・などとくつろいで読んでいたその時!
らしているんです。
「終わった・・・私のクリスティーは終わった・・・。」
失意の私はその後しばらくクリスティーに触れることはありませんでした。
今だったら読書界追放ものですが、(もちろん、ここからはネタばれなんていうお断りなしです)その
頃はゆるされたんでしょうねえ。いや、その後追放されたかもw
あの衝撃のトリックを知ってしまった私は、クリスティーを読む楽しさの2/3は失ったような気がしま
す。
それでも結局ミステリー中毒者となって今日まで読んでいるってことは、ミステリーがとてつもなく魅
力的なジャンルだからでしょうね。
結局その後「Yの悲劇」「オリエント急行」は読みました。「アクロイド」だけは、ケッて感じで読む気になりません。(さすがに・・・)